御教条の世界 古典で考える沖縄歴史

高良倉吉(著)、名嘉睦稔(作画)、西山ゆみ(デザイン)、近代美術(製作)、おきなわ文庫(発行)、秋山夏樹(企画)

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レーベル
おきなわ文庫
シリーズ
おきなわ文庫電子版

926円(税込)

*紙本からテキスト起こしをおこないました。一部誤字、体裁のくずれなどありますことをご了承ください。

御教条の世界
●電子版あとがきより
 琉球史上、最も有名な史料である「御教条」の紹介者に私がふさわしいのかどうか、というためらいを覚えながら、原稿を作成したことを今思い出している。有名なわりには、多くの人びとが理解できるような翻訳本が出ていないので、不十分で良いから出すにかぎる、との覚悟でとにかく刊行した。
「御教条」がどのように読まれたか、また、どの範囲まで普及していたのかというテーマを追求すると、一編の論文が書けるはずだと考えていたのだが、怠惰な性格ゆえに、取り組むことをしてこなかった。
 鹿児島地域史の研究や解説に多くの業績を残した故山田尚二氏から、奄美に流刑中の西郷隆盛が筆写したものと伝わる古文書を提供してもらったことがある。「琉球のもののようですが、何という文書ですか?」と訊かれ、即座にそれが「御教条」であると判ったので、その旨回答し、解説を加えたことがあった。その伝聞が正しいのであれば、再起を胸中に刻みながら、異郷の地で、西郷隆盛が「御教条」を写すために筆をとり、琉球版儒教入門書に向き合った姿が想像され、ほほえましく思った。
 また、鹿児島県から琉球大学に入学し私のゼミに属した印塚美和(旧姓樺山)さんが、琉球・薩摩関係史に関する優れた卒論を書いてくれたのだが、彼女の研究で興味深い事実が判明した。
 一六〇九年春、琉球王国は圧倒的な軍事力を誇る薩摩軍に敗れたのだが、そのとき薩摩軍の総大将であった樺山久高の子孫の家に、なんと、「御教条」の写しが存在していたのである。
 樺山久高の子孫は、総大将である彼が打ち負かした琉球国王、尚寧の霊を屋敷内に「内神」として祀り、その子孫の一人が在番奉行スタッフとして那覇に勤務した折に、尚寧王の霊前に線香を捧げたいと、琉球側に申し出た事実が知られている。そのような樺山家のたたずまいに、「御教条」写本の存在を重ねたとき、琉球と薩摩の関係史の別の側面が見えてくるような気がする。
 確実に言えることは、「御教条」は、それが公布された時点で完結したのではなく、その後の時代の文脈がまとわりついている、ということだと思う。
二〇一二年一〇月    高良倉吉

●本書は1982年にひるぎ社より刊行された作品を、著者たちの協力のもと電子書籍として復刻したものであり、底本を元に加筆・修正している。

●ひるぎ社『御教条の世界─古典で考える沖縄歴史─』(1982年9月15日 初版発行)に基づいて制作されました。

今回の復刻にあたって、たくさんの先生方、故人にあたってはご遺族の方々に多大なご協力をいただきました。代表として、相談役を引き受けて下さった高良倉吉先生に心よりお礼申し上げます。
秋山夏樹
御教条の世界

目次

はじめに

  ──「御教条」を読む前に──

第一章 士農工商の心がまえ

 1 薩摩に感謝すべきである

 2 役人たる者の心がまえ

 3 士族たる者の心がまえ

 4 地頭たる者の心がまえ

 5 地方役人たる者の心がまえ

 6 百姓たる者の心がまえ

 7 工商に従事する者の心がまえ

第二章 人間としての心がまえ

 8 孝行は人間の道の題目である

 9 嫡家は一門の根源である

 10 女性に重要なのは節義である

 11 夫婦は人間関係の根本である

 12 兄弟・舅・甥は天性の間柄である

 13 子供の教育は家庭の題目である

14 貴人・富人の子供の教育はとくに肝要である

 15 舅・姑と嫁は実の親子である

 16 親類・縁者は情意をもつべきである

 17 老人は世の中の宝物である

 18 貧乏人にこそ親愛の情をそそぐべきである

 19 主人・下人ともにそれぞれの立場をわきまえるべきである

 20 他人をねたまぬよう心を鍛練すべきである

第三章 生活上の心がまえ

 21 正道を重んじ平和な家庭をつくるべきである

 22 身命を尊重する心がけが大切である

 23 酒色を好むのは災いのもとである

 24 義理・正道を重んずる人は繁栄する

 25 トキ・ユタは厳禁である

 26 死霊・生霊は迷信にすぎない

 27 葬式は華美にながれないようにすべきである

 28 「服制」の規定を守るべきである

 29 年回忌は主客転倒してはならない

 30 気持の修行は大切にしなければならない

 31 幸・不幸は心がけで決まるものである

31 幸・不幸は心がけで決まるものである

 32 人間はすべて天性の徳義をもっている

 33 「御教条」の結びの言葉

おわりに

  ──「御教条」を読んだあとで──

電子版あとがき

●付録  「平時家内物語」

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